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鬼祓師主・千遥過去話*壱

千遥の過去話を千遥視点の語り口調でまとめてみました。
ものはらカテゴリと迷ったのですが設定の延長なのでこちらへ。

文字書きさんではないので(かなり)見づらいと思います
語り口調なので情景描写とか無いですゴファー
それでもあの そのうち鍵ちゃんサイドとか続きま…す…



運命なんて 

神様なんて

そんなもんくそくらえ








「「おにーちゃん」」

ステレオで俺を呼ぶ声に振り返る。声の主たちは、自分より一回り小さい弟と妹。
いっつも俺の後ついてきてさ。ヒヨコみてえだな、とか思ったり。
頭撫でてやると喜ぶんだ。子供特有のふわふわの髪の毛。

「おにーちゃん、大好き」

うん。俺も、お前たちが大好きだよ。
顔をほころばせると、負けじと満面の笑みが返ってくる。
お前たちはずっと、俺が護るから……




浦壁の家の者は 皆 何かしら力を持って生まれてくる

それは強い霊力であったり 氣であったり とにかく常人とは違う不思議な力

伝承によると この世の「裏」の「壁」であれと 神から力を授かるのだという

だが稀に 何の力も持たぬ子が生まれることがある

浦壁の血に惹かれるは、妖や悪鬼、悪霊生霊

力のない子に残された運命はただひとつ

逃れられない 《死》――――…




「だからね、千遥さん。あの子たちは長くないのよ。そういう運命なの」

母さんが顔を両手で覆って泣いている。
運命。なんだよ、それ。
死ぬのが決まってるって?馬鹿じゃねえの?
ガチガチに固まった考えの家族。だから割り切れっていうのか。
運命だからしょうがない、って。


俺自身は一般人よりも、【氣】が強いらしい。
でもそれ以上に何か特記したモンがあるわけじゃなくて。
ああ、あと変なモノが見えるくらい。
人間に化けた人外のモノや、異界と繋がってる道だとか、とにかく普通には見えない変なモノ。
霊が見える…ッてのとは、またちょっと違った感じ(まあ見えるけどな)
そんな力しかない俺は、いわゆる半端者。可もなく不可もなく、みたいな。

強い氣を持つ代わりに、体が弱い母さんは俺の後に暫く子供を産めなかった。
浦壁…ッてもうちは分家みたいなもんなんだけど。
エリート思考の父さんは、それがどうにも気に入らないらしくてさ。
半端者の俺は特に期待されることもなく、好きにされてた。
そんな時にやっと母さんがまた身篭って。
喜んでたよ、父さん。俺に向けたことない笑顔。
でも、それも。
生まれた二人の子が何も力がないただの【人間】だと、わかるまでだった。


荒れる父さんに、嘆く母さん。
小さく儚い命を抱きながら…俺は、この子らを護るって決めたんだ。



「おにーちゃん、ないてるの?」「てるの?」

同じく泣きそうな顔で俺を覗き込んでくる二つの顔。
二人の頭をくしゃくしゃと撫でながら、にっこり笑ってみせる。

「泣くわけないだろー?兄ちゃんはな、強いんだぞ…がおー!」
「きゃー!」「わー!」

へとへとになるまで三人で遊んだ公園。
こんな幸せな時間を、壊させてなるものかと思ってた。





だけど。





夕暮れに染まる交差点。
両手にそれぞれ、小さい紅葉のような柔らかい手を握ってた。
「こうえん、たのしかったね」「たねー」
そんな他愛無い会話をしながら信号が青になるのを待っていて。

ふっと、顔を上げたら。
車が猛スピードでこっちに突っ込んできたんだ。
真っ黒な『何か』に覆われた車。
ざわりと全身の鳥肌が立ち、氣が騒いだのも一瞬だった。
俺は、咄嗟に二人を腕の中に抱きしめた…



気が付いたとき、俺は真っ白な部屋にいた。
独特のにおいで病院だとわかる。
ズキンと頭と体が痛むけど、瞬時に記憶を辿って周りを確認する。
俺の隣のベッドには、誰もいない。
嫌な予感がして、俺は動きたくないと悲鳴を上げる体に鞭を打って病室を飛び出した。



それから先の記憶は曖昧で。



護るって決めたのに、それも出来ずに…俺だけが生き残ってしまった。

二人が死んだのが、運命?
違う。俺の力が足りなかったせい。
けれど…神様がそれを運命だというのなら。

俺は、苦しい人に手を伸ばしてくれない神なんて信じない。
皆が幸せになれない運命なんて、変えてみせる。
今度こそ……大切な護りたいものを、自分の手で護れるように。







「俺はさ。自分だけ普通の日常送ったりとか、幸せになっちゃいけないんじゃないかとか思ったりもしたんだ」

鍵と二人縁側に座って。忙しい日々からちょっと離れてまったり過ごす、好きな時間。
俺は足をぶらつかせ、過去へと記憶を辿らせていた。
思い出すだけで苦しくて仕方なかったあの出来事。今は、こうして…向き合うことが出来る。

「今はどう思ってるんですかい?」
「二人の分も、幸せになってやろうと思ってるよ。で、あっちに行ったら色々話してやるの」
「ふふ…そうですね。その方があの子たちも喜ぶと思いやすよ」

細い眼をさらに細めて俺のほうを見てくる鍵は、相変わらず何考えてんのかわからない。
誤魔化したり、はぐらかしたりで…結局俺はこの狐のこと殆ど知らないんだけど。
何故か、こいつは俺のことよく知ってるんだよ。全くどこから聞いてくるのか…昔の俺の話とかまで。
初恋の子の話とか言い当てられたときには、流石に手が出た。悪くないぞ俺は。
まあ、二人のこと話したのは……俺なんだけど。
ッいうか、話さされた?ん?なんつーの?





俺は、幸せになるよ。
そうしなきゃって…教えてくれた鍵も、一緒に。
……そんなこと、面と向かって言えやしないけど。




゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚




仮にも神の使いに対して、神なんて信じないとは…全く、面白い事を仰る。

"あの子達"と言った事に、千遥さんは気付きやせんでした。
それとも、気づいていないふりをしたんですかね?
いや…そんな真似は千遥さんには出来ないでしょう、…などと言ったら、また貴方は怒るんでしょうか。


重ねる秘密。優しい嘘。
私はいくつ、貴方についているのでしょう。
その中で、唯ひとつ。真実があるとするのなら――――


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