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胡蝶乃夢學園伝奇ブログ。PAGE | 111 110 94 93 92 91 90 147 89 88 87 | ADMIN | WRITE 2011.04.07 Thu 22:58:28 弥生の月もう卯月ですが(爆)
鍵ちゃんお誕生日と千遥誕生日を一緒にーッてことで小話…こばなし…と、挿絵。 相変わらずの作文クオリティなので許してつかあさいガクブル 愛は!!たっぷりありやすんで!!(きりッ ※当家設定狛犬さんがおります注意。 宜しければクリックずずいとどうぞなのです~ ■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□ 弥生も半ばをすぎたというのに、寒さは変わることがなく。 ちらほらと咲いた梅の花も震えているような錯覚さえ覚える。 そんなある日のこと。 「鍵、その…今日、誕生日なんだよな?」 ふいに千遥さんに言われた言葉は馴染みがなく、一瞬返事までの間が開く。 それを不安に思ったのか、慌てて千遥さんは言葉を付け足した。 「あ、違ったか?鍵の本体像にさ、建立日が書いてあって…それが今日だったからそうかなぁッて」 「ああ…そういやそうでしたね。確かに今日は私がここに来た日だ。 ここの神使として生まれた日を言うんでしたら、誕生日としちゃ間違っちゃいやせんよ」 そういえば、千遥さんは「そっか」と、嬉しそうに笑って。 最近はずっと増えた笑顔。 そんな彼につられて、私も笑う事が増えた気がする。 「じゃあ今日が鍵の誕生日ッてことで。おめでとーな」 そう言って千遥さんから手渡されたのは、丁寧に包まれた大きめの稲荷寿司で。 手作りの品なのは、期待とこちらの反応を探るような目で直にわかった。 まったく、心だけじゃなく顔に全部でちまうんだから、ねェ。 くつくつと笑うと、むっと千遥さんは口をへの字に曲げる。 「なんだよ、そりゃちょっと不恰好かもしんねーけど。ちゃんと美味いッつーの」 「ふふ…わかっておりやすよ。私ァ千遥さんの手作りのコレが、いっとう好きですからね」 そう言えば、今度は顔を赤くして。 「あ、え。そう…か。じゃあ、ちゃんと全部食べろよ?たりなきゃまた作るから、さ。 ……あ、けッ鍵がここの神使になってから、百年くらいなんだろ? 来たばかりの頃は鈴みたいだったわけ?」 急に話題をそらそうと、言葉を詰まらせながら言う様子に。 私はまた笑いそうになりながら、ふっと目を細めた。 +++++++++++++++++++++++++ 鴉羽神社、狐像の建立日。 それまでは他の地の神社でお勤めをしたり、ふらふらと各地を回ったりしていたんですけどね。 神からのお言葉とあれば、従わなきゃいけないモンで。 面倒だ、なんて思う気持ちも無かったといえば嘘になりやす。 正直気が乗らなかったんですよ。気に入らない、と言った方が近いでしょうか。 羽鳥家にまつわるその話、も。 人には深く関わらないと決めた。必要以上の感情も持たないと決めた。 それでも……見守るしかない神使の仕事ッてのは。嫌なモンですよ。 そんなことを思いながら、鳥居をくぐる。 確か、私の対になる相手は狛犬だと聞いていやした。 話半分に聞いていたモンでね、そういえば名前も聞いちゃいやせんでした。 確か、… 「やあ鍵、久しぶり」 久しく呼ばれた事のない、私の名。 突然にかけられた声の方向を見れば。 まるで昨日あったばかりのように、狛犬はひらひらと軽く手を振っていた… 「貴方は本当に…変わっちゃいやせんね」 「そう?男前になったじゃないか。鍵は随分と…どうしたの、髭なんか生やしちゃって」 「別にいいでしょう」 彼に逢うのはいつぶりか、思い出せないほど昔。 けれど、こうして隣で笑う彼はあの時と同じ…希望に満ち溢れた、変わらない笑顔で。 私だけが…変わってしまったのだろうか。 「あ、そうそう。鍵にコレ渡しておかなければね」 そう言って手渡されたのは、くるりと巻かれた形の煙管。 手に持った瞬間にわかる。 これは――鴉羽神社の、《鍵》だ。 「鍵が預かっているように、ッて。無くしちゃ駄目だよ」 「貴方じゃありやせんし…それに、私ァそんなヘマはしやせんから」 「言うじゃないか、鍵ッてば」 あれから更に、時は流れ。 私の元には、まだこの《鍵》がある。 思えばこれが、初めての「誕生日ぷれぜんと」なんでしょうかね。 私のモノでもない。借り物、ですが… +++++++++++++++++++++++++ 「…仔犬ちゃんみたいな私ですかい?はは、どうでしょうねェ」 「なんだよ、誤魔化すなッてば」 「それよりも千遥さん。これ、一緒に頂きやしょうか」 そういって貰ったばかりの稲荷寿司を手に、にっこり。 「…話そらしたな。まあいいけど…あ、それとさ。えーッと…」 言いよどむ千遥さんの言葉を、待つ。 こんな時間も好きだなんて、自分でも相当だと思いやすよ。 と、ふいに頭の中に声が聞こえやした。千遥さんの、心の声。 『今日、時間あるから。お前と…鍵と。一緒に…い、いた……い』 おや、と千遥さんを見やると俯いてしまい、その顔は見えない。 いつまでも私の恋人は、初心で照れ屋でしてね。 そっと包み込むように抱き締めれば、ぴくりと体が跳ねた後、そっと手が私の袖を握る。 この幸せな時間は、私だけのもの。 私だけの… ふと。 気付いた。 「…私は。今日だけじゃなく、貴方から…ニンゲンから。贈り物を沢山貰っていたんでしょうか」 共に過ごした、短くとも暖かな時間。 私の名を呼ぶ、声。 私に触れる、その温もり…そして、思い出。 「…ん。なんだ、自分は何も持ってない、とか思ってたのか?」 「それは…」 「今のお前があるのはさ。色んな経験とか、出逢いとか、思い出があるからだろ? こっちで逢ったばかりの時、言ってたよな…自分は曖昧な存在だって。でもさ。 お前は…鍵は、間違いなく鍵だよ。今、鍵を形作ってる思い出も含めて、な」 自分のものというものは。 目に見える、形に残るものでなくても構わないのだ、と。 …そうですね。 どうにも長く生きてると、考えが凝り固まっちまっていけやせん… 「…なら。これからの私は…私の思い出は。貴方が作っていってくださいね、千遥さん」 「お…お、おう」 「そして、貴方の思い出も私でいっぱいにしなければ、ねェ」 「………お前の言い方、なんか…アレだ」 「おや。そりゃア、千遥さんがそういう事を考えているからじゃないですかい?」 「なッ!ち、ちげえ!!あほ!」 そういって飛び掛ってきた体を、再びふわりと腕の中へと閉じ込める。 私が今まで貰ってきた物を。 私を形作ってきたものを。 今度はこの人に、捧げよう。 彼の思い出が、私でいっぱいになるように。 「そういや、もうすぐ千遥さんの誕生日でしたよね」 「えッ?あ、そうだけど…」 「それじゃァ、私を差し上げやすから。今日は千遥さんを、私にくださいね。あァ…今日も、が正しいですか」 「へ…そりゃどういうこ」 それ以上の言葉は要らないと、千遥さんの唇に自分のそれを重ねる。 ああ。私にはもう一つ…自分のものがありやした。 ―――千遥さん。 大事な、私の。 たった一つの…宝物。 =終= おいなりさんは袋に入れた状態で足元に( PR TrackbacksTRACKBACK URL : CommentsComment Form |