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鬼祓師主・千遥過去話*参

千遥の過去話、鍵ちゃん視点その二。 ■前のはこちら⇒千遥過去話・壱千遥過去話・弐

これで過去話は終わりやす。この二人の関係を前提に、
漫画の続きぽちぽち連載していきたいなぁと思いますすっごい描くの遅いけど←
今回も例のごとくの作文クオリティー








これは後からあすこの神使に聞いた事なんですがね。
あの日は…あの子の「お誕生日」だったそうで。
お家の人とは、上手くいってなかったようですよ。
楽しそうに家族の話をする友達が羨ましくて、寂しくて。神社に逃げ込んでたッて、訳で。

同じ痛み。私があの子に、あの子が私に感じたのはそれだったンでしょうか。
優しい気持ちと、温かさ。
忘れていた、忘れようとしていた想い。
そんなモンが…知らず、思い起こされちまった。


私ァそれから、その子の事が気になりましてね。
名前から始まって、普段なにをしてるのか。何が好きなのか。何が得意なのか。
寄り合いで集まるたびだとか、何かの用事で遠出したときなんかに、その子…千遥さんの事を聞きやした。
狐の情報網ってのは、結構広いモンなんですよ?なめたらいけやせん。
そりゃもう、こんなことまで?ッていうくらいの小さな事までね。手に取るように丸わかりッてわけです。
それでも…自分で逢いに行く気には、なれなかったんですよ。

これ以上は近づいちゃァいけない。
関わっちゃアいけない…ッて、ね。
忘れる事だって出来たはずなのに。やっぱり私は…弱いんですよ。







それから何年が経ったのか…
ほんの気まぐれで、私はちょっと遠くに散歩にでやした。
真っ赤な夕日に染まった路を、歩く。
冷たい道路。狭まった空。
そんな中でも、流れる風は…冬の気配が混じった、秋の香りを運んでくる……

ふと。

あの芳しい…香りが鼻先を掠めていきやした。
この香りは。けれど、あの時より酷く…むせ返るように、濃い。
人間と同じ心臓なんてモンは、神使にはありやせん。
けれど…どうにも胸騒ぎッてやつと、嫌な予感が…からっぽのココで、早鐘を打っているように感じたんです。



だんだんと濃くなる香りを辿り、駆ける。
視界に入ったのは…交差点で待つ、三つの影。
きょうだいが生まれたと聞きやした。あの小さな二人は「そう」なんでしょう。
そして……忘れようもない、泣き虫だったあの子。人間ッてのは、随分と成長が早いものだ、なんて。
姿を確認して、安堵したのもつかの間。


―――陰気。


真っ黒な念に包まれた車が、三人の立つ交差点に、物凄い速度で突っ込んで…――
助けなければ。
そう思う前に、体が動いた。













けれど…
運命は、変えられなかったンです。
力のない子に残された運命はただひとつ。
逃れられない《死》――――…


千遥さんを助けられた。
否、千遥さんしか助けられなかった。

私は、千遥さんの宝物を……護れなかったんですよ。




゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚o。o゚





これが、貴方に言えない秘密の、ひとつ。
ねェ、千遥さん。運命ッてのは、やはり変えられないモンなんです。
いくら願っても、いくら足掻いても、容赦なく襲い掛かってくる。

私に寂しさを、悲しさを。愛する方と共にある、幸せを、喜びを。
与えた貴方が―――のも、運命。


それでも、願わずにはいられない。
馬鹿な事だと…わかっておりやす。




「鍵!」
「……千遥さん?学校は…」

千遥さんの声に、一気に意識が現在へと引き戻された。
駆け寄ってきた千遥さんの頬は、走ってきた事と…寒さのせいか、ほんのり赤く染まっていて。
今が、冬なのだと思い出す。

「学校ならさっき終わったとこ。ただいま」
「ああ…すいやせん。おかえんなさい、坊。今日は楽しかったですかい?」
「ぼんいうな!!…今日は体育の授業で100m走一位だったんだぜ。燈治とギリ勝負だったけどな」
「そうですか、そりゃアえらいえらい」

そう言って頭を撫でれば、千遥さんは今度は顔を赤くして怒る。

「だー!!!なでるなー!!!!」

小さい貴方が教えてくれやした。
頭を撫でると、寂しい、苦しい…全部飛んでいくのだと。
貴方はそれを。私との出逢いも、覚えていないけれど。

私は、覚えておりやす。
私が全部、覚えておりやす。
貴方との今も、いつかは思い出になるのでしょう。
それも全部……忘れたりはしやせん。
けれど。

思い出より、何よりも。
貴方とずっと…―――








甘い幸せを 
知ってしまった。
叶う事のない未来を
求めてしまった。


それはまるで…禁断の、果実。

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