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鬼祓師主・千遥過去話*弐

千遥の過去話、鍵ちゃん視点。 ■前のはこちら⇒千遥過去話・壱
語り口調と何か色々混ざっていて読みづらいですがもうだめだ

今回も情景描写とかサッパリですが想像力働かせてみていただけると幸いです←
しかもまだあと一回くらい続きますorz






神使にも、人間と同じく寄り合いッてのがありまして。
定期的に集まって、話をするんですよ。
鳥に蛇に鼠に兎。そりゃもう、にぎやかなモンです。

でもまぁ、話すことといや。
自分の管轄でなにか事件があったとか、新しい建造物が建ったとか。
しまいにゃお供えの質が悪いだとか、近所の悪ガキに像がイタズラされたなんて、そんな他愛もない話。
おまけに毎回最後はどんちゃん騒ぎになっちまうんだから、神様も神使も、昔ッからお祭り騒ぎが大好きなんでしょう。
そんな中、私は。どこか一歩引いて、それを見ている。
面倒…だなんて、思っても言えやしやせんがね。

そんな寄り合いの召集がかかった、もうじき春になろうかという、冬のある日のこと。
鴉羽近くにある神社の神使と連絡がつかないッてんで、私がそのお迎え役に選ばれやした。
全く、何をやっているのやら。

―――ああ、面倒だ。









目的の神社の鳥居をくぐり、周囲を見渡す。
時刻は、夕方。酉の二刻頃。
参拝客の姿もなく、しんと静まり返った境内に神使の姿はなく。
人がいないからッてんでだらりと寝転がってたら承知しやせんと、
よくそうしている自分を棚に上げて、ぴんと耳を立てる。

ああ…これは、本堂の奥?話し声が聞こえ…


ぴくり。

体が跳ねる。



甘く…芳しい、香り。
花の香りか?いや…違う。なんだ、これは…

思わず一瞬我を忘れた、次の瞬間。




「やーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!」


一気に意識は引き戻され、耳をすませる必要もないほど大きな…泣き声が、神社中に響き渡った。
続いて言葉にならない叫びが続き、それを頼りに奥へと足を運ぶ。

そして、本堂の奥に…その騒音の塊と。この神社の神使が、困り顔で慌てていた。
私の姿を目の端に捉えると、ぱっと顔を明るくして駆け寄ってくる。

「あぁ、鍵さん!助けてくださいよう!」

……厄介ごとをおしつける気ですか。ちらりと、神使の後ろで相変わらず騒音を出し続けるモノを見る。
わんわんと泣いているのは……私の背丈の半分ほどの小さな、子供。

「別に、子供何ざ放っておきゃあいいでしょう。それで足止め、食らってたとでも言うつもりですかい?」
ちょっとトゲを含んでそう言えば、神使はわかってくれといわんばかりにこちらをじっと見る。
「それが…」
「いっちゃやだあ!!!」

ぎゅう、と。
その体と同じく小さな手が、神使の服をしっかりと……掴んでいた。
「!」

この子供。
私ら神使が見えている…そのうえ、触れている。
昔に比べれば大分減ってしまったが、姿を見られることはたまに…そう。ほんの、たまにあった。
だが、それすらももう鬱陶しい、だけ。

関わりたくない。

反射的に、体が拒否反応をとり…一歩、距離を置いた。
それを見捨てられたととったのだろう。神使は眉を下げて、子供と同じく泣きそうな顔になっている。

「この子が離してくれないんですよう…ほら、泣いてるし、こんな《悪いモノ》の多い時間に一人で放っておけないし…この子、浦壁の子なんです」


――浦壁。聞いたことがある。
この世を支える裏の壁であれと、不思議な力を持って生まれる一族。
その血が与えるのは力だけでなく、妖や悪霊に惹かれる呪いも同時に授ける。
ああ、先ほど感じた香りは……

記憶は無いが、元は獣の身。
それに反応した自分は、やはり純粋で完全な《神使》ではないのだろう。
ふっと自嘲気味に笑みを零すと…その子供と、目が合った。
私が来るまでの間もずっと泣いていたのであろう、大きな目は真っ赤で。
けれど…強い意志と力を秘めた、確かな光を宿した瞳。
私の薄暗い心の奥まで覗かれているような気まずさに…ふい、と目をそらす。
すると。
きつく握っていた神使の服から手を離し、こちらにてとてと、歩いてくるじゃあないですか。
明らかにほっとした様子の神使を軽く睨みながら、私は子供に視線を落とす。


目と目が、あう。
子供は両手を広げ、私の着物をくいくいと引っ張る。
屈めと言いたいのだとわかって、片膝をつけば。

いっぱいに広げられた小さな腕に…抱きしめられていた。
ほのかな温もりが、じんわりと体を包む。


「な…」
なぜ。そう言おうとする前に、子供が口を開いた。
「寂しい、の?」

先ほどまで泣いていた声は、かすれ、震えていて。
そのか細い声のまま。

「痛いッて、悲しいッて。言ってる…」
「ッ!」

思わず手を払うと、子供はとすんと尻餅をついた。
そんな私達の様子を、神使はただおろおろと見守るばかりで。
私は。私は―――







違う。
違う。
寂しくなんて、ない。
悲しくなんて、ない。


『鍵は、さびしがりのくせに臆病だよね。もっと、求めてみたらいいんじゃない?』


いらない。温かさなんてモンは、いらない。
どうせ消えちまうんだ。全部全部、私を置いて。裏切るんだ。私を捨てて。


『人を、愛するッてこと。鍵にもいつか…わかるよ』


やめてくれ。
やめてくれ。

やめてくれ!!!!!!!!!






……いつの間にか、私は。
払ったはずの、腕の中に再び抱かれていやした。
ふわふわと頭を撫でるのは…子供の手の感触。
甘い、香り。
ちいさな、温もり。

「ずっと…まえ」
ぽつりと、子供が呟く。
「母さんに、撫でてもらったの。寂しいの、苦しいの、全部飛んでくんだ」
ふわふわ。耳の後ろをなでる手が、くすぐったい。
「だから、狐さんも。なでなで……悲しいの、飛んでけッ」

そうやって、にっこり浮かべた満面の笑みが。
私には…ひどく、眩しかったんですよ。



それが…初めての、千遥さんとの出逢いでした。

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